2014年11月22日土曜日

【DT008-01】 保護犬ベイスくんと落ち着くためのトレーニング


僕が子供だった頃は、今では当たり前のように飼われている純血種の犬はまだ珍しく、近所で飼われている犬の大多数はミックス犬でした。
ただ、僕が言っている『ミックス犬』というのは、ここ10年ほどの間に流行り始めた人が意図して作り出している所謂『一代ミックス』のことではありません。
どんな犬種の親犬から生まれてきたのか……その容姿からは簡単に判別することができない犬、僕たちが子供の頃に『雑種』と呼んでいた、最も慣れ親しんでいる愛すべき犬らしい犬のことです。

最近は日本で飼われている犬も純血種が多くなったせいか、そういった昔ながらのミックス犬をトレーニングするチャンスになかなか出会えなかったのですが、このブログを読んでくださったミックス犬の飼い主さんからトレーニング依頼のご連絡があり、その機会を頂きました。

トレーニング依頼のあったミックス犬は、ベイスくんという男の子で、推定生後六ヶ月。

何故『推定』なのかというと、このベイスくん、飼い主さんの息子さんが通っている高校に迷い込んできたところを保護した犬なので、正確な生年月日がわからないのです。
保護した8月に予防接種を受けた際、獣医さんに「たぶん今年の5月頃に生まれた子です」と診断されたそうです。

ということなので、このベイスくんがどんな犬種の親から生まれてきたのかも、当然わかりません。
事前に飼い主さんからは、「ラブラドールに似た雰囲気があるのですが、大型犬にはならなさそうな感じです。」という情報と共に、保護した直後の三ヶ月当時の画像を頂きました。


この画像からは、ジャックラッセルテリアに似た雰囲気も感じるのですが、小型犬のサイズは疾うに越えているとのことでした。
そういった事もあったので、今回は余計な先入観や思い込みを持たないようにして、実際に伺ってからベイスくんの行動特性を見極めることにしました。

そして、実際に飼い主さんのお宅に伺って対面したベイスくん。


保護当時に画像に比べると、顔付きもだいぶ変わって大人っぽくなっていました。

尻尾がきれいに巻いていたので、柴犬等の和犬の血が入っていることはわかりました。
そして、顔のパーツや色の入り方を見て、僕の中にはある犬種が思い浮かんだのですが、それはベイスくんの行動特性を観察しながら確認していくことにしました。


今回、飼い主さんからは、ベイスくんの噛み、飛び付き、室内でのいたずらを無くしていくためのトレーニングについてのご相談を頂きました。
この中でも、噛む行動がどのような性質のものなのかが気になっていたのですが、実際にベイスくんに接してみたところ、人が好きで遊んでもらいたくて甘噛みしたり人の手に歯を当てたりしているということがわかり、少し安心しました。
飛び付き行動も、同様の理由から行っているようでした。

飼い主さんは、ベイスくんの成長と共に、この噛む行動が激しくなっていく可能性を心配されていましたが、その行動は優位性や恐怖に起因するものではなかったので、飼い主さんが日々トレーニングをしていくことで十分に無くすことができるものでした。
ベイスくんが飛び付き、甘噛みを仕掛けてきている時には決して相手にせず、落ち着いてオスワリをしていられる状態になったら褒めてあげることを徹底するように飼い主さんにお願いしました。
ベイスくんは既にオスワリを覚えていたので、トレーニングはとてもスムーズに進められました。
最初は少し考え込んでいたベイスくんでしたが、すぐに「オスワリをしていれば何かいいことがある!」ということを理解してくれました!

『犬を落ち着いた状態で過ごさせたいのであれば、犬が静かな状態の時に褒める』
気付きにくいことですが、実はこれが最も大切なことなのです。


そして、ベイスくんには散歩中の引っ張り行動もあるということだったので、お散歩トレーニングもしてみました。


飼い主さんに注目する頻度、時間を高めるため、おやつを使ってヒールウォークの練習をしてみました。
おやつが大好きなベイスくん、しっかりとおやつに付いて歩いてくれます。

ヒールウォークの練習は、地味で多くの時間を必要とするので、犬も人間も疲れます。
見た目以上に大変で、重労働です。
自分のペースで走ったり地面の匂いを嗅いだりしたいと思っている犬の性質を、トレーニングによって変えていくので、当然時間もかかります。
この記事でも少し触れましたが、気持ちとしては最初から最後まで犬の好きなように散歩をさせてあげたい…僕はそう思うのです。
ただ、散歩には多くの刺激や危険が常に付いて回ります。
いざというときのため、犬を危険から守るためにも、まずは散歩の基本となるヒールウォークはできるようにしておいたほうが良い、僕はそう考えています。。


お散歩練習の後、小学生の息子さんと庭で遊ぶベイスくんを見ていて、ふと気が付いたことがありました。
息子さんが走り出すと、ベイスくんは家の周りを囲む庭の一番外側のラインをぐるぐると回るように走り続けました。
そして、少しずつ内側に入ってきて、息子さんが動くのを止めるとその近くでピタッっと伏せる……そんな動作を何度も繰り返していました。
この動作、ボーダーコリーをはじめとする、牧羊犬のアビリティです。
尻尾の形とこの動作から、ベイスくんは和犬と牧羊犬の血を引き継いでいるということが想像できました。
親がわからないミックス犬は、事前にその特性を調べることができない難しさがありますが、外見や行動の特徴をじっくり観察することによって、その犬を理解していくという楽しさがあります。


ベイスくんはまだ生後六ヶ月ということもあって、遊んだり走ったりしているうちにどんどんテンションが上がって、その行動が激しくなっていくようでした。
それによって飛び付きや甘噛みもはげしくなるようだったので、飼い主さんには、遊びの合間にブレイクを入れて、一旦ベイスくんが落ち着いてからまた遊びを再開するようにと、アドバイスさせてもらいました。
いつでもどこでも、その犬のテンションと行動をコントロールできるようにするトレーニングはとても大切です。
それを続けていけば……ドッグカフェにも必ず行けるようになります!


実は、今回ベイスくんのトレーニングで伺った場所は、こんな自然豊かな素晴らしい場所でした。


僕の住む草加からは、電車とバスを乗り継いで2時間30分掛かる茨城県某所。
ベイスくんのトレーニングの依頼をいただいた時、「茨城県内在住の他のトレーナーにトレーニングを頼もうかな…」という考えが一瞬頭の中を過ぎったのですが、ベイスくんの飼い主さんに多々ご配慮・ご協力をして頂いたということ、それと、(こういうことを言うとまた笑われると思いますが、)潜在意識の中の何かに呼ばれているような気がしたので、自分で伺ってトレーニングさせてもらうことにしました。

飼い主さんのお話では、ベイスくんを保護した息子さん、犬を保護したのはベイスくんで三頭目とのこと。
過去に保護した二頭の犬は、里親さんを見つけてしっかりと送り出したそうです。
そして、今回保護したベイスくんは、家族として迎えることに。

動物の殺処分の話になると、いつもワーストで名前が挙がり非難の的になる茨城県ですが、このような素晴らしい活動をされているご家族もいらっしゃいます。
逆に、殺処分がゼロになったと言われている地域にでは、動物を捨てる人がゼロになったのかというと、そういう訳ではありません。
腰の重い行政や、金儲け目的だけで命を動かすペット業界、動物の飼育を途中放棄する無責任な人間たちを罵倒したくなるのが人情ですが、その前に、まず一人の人間が一頭の動物としっかり向き合うことが大切だということを、飼い主さんのお話から学ばせて頂きました。
一人が一頭を……たくさんの人がそれをできるようになれば、多くの命が救われることになると思います。

トレーニングで伺った僕が、逆に大切なことを教えていただきました。
感謝の気持ちでいっぱいです。


そして、こんなお土産を頂きました。


とても美味しい柿。
草加周辺ではちょっと手に入らない美味しさでした!


トレーニングに対する意識の高い飼い主さんなので、必ずベイスくんは素晴らしい犬に成長するはずです。
その成長を見させてもらうために、是非またこのご家族の住む茨城に伺いたいと思っています。


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